シクロスポリンの毛包における作用機序の解析の方法としてdifferential display法を利用することから、まず、この方法の確立のためC57BL6マウスを用いて毛周期の成長期と休止期においてdifferential screeningを行った。この方法により我々は成長期に特異的に発現する多くのcDNAクローンを分離し、その内で3つのクローンについてさらに解析を行った。第1のクローンは新規の蛋白をコードしており、この蛋白はN末に1つのSH3ドメインをもつことからSh3yl1と命名した。さらにノーザンブロットの所見から皮膚を含め多くの組織に発現することが確認された。加えて、in situハイブリダイゼイションにより成長期毛包に広く発現し、毛包の成長に関与することが考えられた。 第2のクローンはμ-crystallinをコードしていた。この蛋白はレンズの主要な構造蛋白の1つであるが、最近甲状腺ホルモンに対する結合能が明らかにされ、構造蛋白としてだけではなく、酵素反応に関わるなんらかの機能を有すると考えられている。そして我々はこの蛋白が毛包に発現することを今回の実験で初めて明らかにした。その局在は包の中でもHuxleyおよびHenle層に分布していた。以前より臨床的に甲状腺ホルモンが毛の成長に影響を及ぼすことがバセドー病や橋本病から分かっていたが、その機序としてその結合蛋白であるμ-crystallinが関与している可能性がこの研究により示唆された。 さらに、第3のクローンについては現在詳細に解析中である。
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