紫外線による分子傷害のうち、Photoproduct型DNA損傷(シクロブタン型及び(6-4)型ダイマー)が発癌に最も重要である。メラニン色素には黒/茶色のユーメラニン(DHICAおよびDHIメラニン)と赤/黄色のフェオメラニンがあり、人種・Phototype・個人により、様々な量・比率で混在している。本研究では、特定の種類のメラニン色素を産生するマウス皮膚および色調の異なるヒト皮膚(包皮)を用いて、異なる種類のメラニン色素の紫外線DNA損傷生成抑制効果を検討した。まず、組織学的及び生化学的にメラニン色素の分布・量・種類を解析した。Black、Slaty、Yellowマウスはそれぞれ主としてDHICA、DHI、フェオメラニンを産生し、Albinoマウスはメラニン色素を持たなかった。マウス尾では表皮に多数のメラノサイトが存在し、ヒト表皮のモデルとして適していた。皮膚に、UVB(25mJ/cm^2まで)を照射した後、凍結切片を作製した。研究協力者の森 俊雄助教授から供与された両ダイマーに対するモノクローナル抗体を用いて免疫蛍光染色を行い、共焦点ルーザー顕微鏡を用いて損傷特異蛍光を定量した。 ヒト包皮を用いた実験から、メラニン色素が紫外線DNA損傷の生成を抑制すること、角層内および核帽を形成するメラニン色素が紫外線防御に重要であることを確認した。また、マウスを用いた実験から、DHICA及びDHIメラニンはともに紫外線防御効果が高く、フェオメラニンの防御効果は僅かであることがわかった。メラニン色素量が多く、ユーメラニン/フェオメラニン比が高く、メラニン色素が表皮のより上層から角層に分布し、核帽を形成することが紫外線抵抗性をもたらすことがわかった。本研究を通して、皮膚の紫外線感受性の人種差・個人差のひとつのメカニズムを解明した。
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