既に我々は、臍帯上皮では表皮に類似した分化関連蛋白の発現を認め、さらに臍帯から上皮細胞を分離培養し、高カルシウム培地を用いて気相下培養を行うことにより、重層化させることが可能であることを報告した。13年度は、コラーゲンゲルを用いた三次元培養系により臍帯上皮細胞の性状についてさらに検討を行った。その結果、線維芽細胞を埋没したコラーゲンゲル上で培地中のカルシウム濃度を1.8mMに上昇させ、空気暴露(気相下培養)させ分化を誘導することにより、臍帯上皮細胞は10層前後にまで重層化し、フィラグリン抗体陽性のケラトヒアリン顆粒様の顆粒状構造物を上層部の核周囲に認め、さらにその上層において核は消失し角質層様の構造を形成した。免疫学的検索では皮膚型ケラチンK1/10を発現し、上層部においてトランスグルタミナーゼ、インボルクリン、ロリクリン等のcornified cell envelope associated proteinの発現を認め、これらは表皮ケラチノサイトより作製した培養表皮シートと同様の発現パターンを示した。さらに単層培養した臍帯上皮細胞をヌードマウスの皮膚欠損部に移植したところ、気相下培養時と同様に重層化し生着した。これらの結果は、臍帯上皮細胞を用いて表皮シートを作製し、臨床応用することが可能であることを示すものである。さらに現在は、各種コラーゲン、インテグリン、ラミニン等の基底膜構成成分の経時的発現について検討を進めている。
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