研究概要 |
ヒトメラノーマのin vitroでの増殖に対する17β-エストラジオール,プロゲステロン,ジヒドロテストステロンの作用を検討した。各性ホルモンはいずれもそのレセプター陽性のメラノーマの3H-チミジンの取り込みを抑制したが,レセプター陰性のメラノーマに対しては増殖抑制作用を示さなかった。各性ホルモンの増殖抑制作用はメラノーマの成長因子であるインターロイキン8(IL-8)の付加により解除された。各性ホルモンは,そのレセプター陽性のメラノーマにおいてのみ,IL-8の産生を蛋白質,mRNAおよびプロモーター活性のレベルで抑制し,IL-8プロモーター上の-98〜-63bpの領域が転写抑制に関与していた。各性ホルモンレセプター陰性のメラノーマに当該レセプターをトランスフェクトすることにより,目標とする性ホルモンによるIL-8の産生抑制作用を誘導することが可能であった。以上の結果から各性ホルモンはヒトメラノーマにおいて,レセプター依存性にIL-8の産生を抑制することにより,その増殖を抑制することが明らかになり,メラノーマの治療において性ホルモンが有効であることが示唆された。今後は,血管拡張性肉芽腫の発症における各性ホルモンの役割について,皮膚毛細血管内皮細胞を対象としたin vitroの実験系を用いて検討する予定である。
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