研究概要 |
生後6-8週令の背部皮膚がピンク色である、すなわち、毛嚢が休止期にある雌のC57BL/6マウスを用いた。シンクロナイズした毛周期を作製するため背部を全身麻酔下に除毛した。抜毛後、15,30分、1,2,4,6,12,24,30,36,42,48,54,60,66,72時間に背部の一定部位より皮膚を採取した。組織学的に抜毛後15分に毛嚢下部に空洞が生じた。この空洞は辺縁の細胞が平行に並び36時間まで認められた。42時間からはhair germが増大していった。 この空洞辺縁の平行に並んだ細胞はTUNEL染色にて陽性で、アポトーシスに陥ったものと考えられた。抜毛12時間後の皮膚から抽出したDNAは電気泳動でDNA ladderを示し、アポトーシスが生じた事の確認がなされた。 また、BrdU染色ではこの平行に並んだ細胞が抜毛後12時間で陽性であり、これらの細胞はS期に入ったものと考えられた。 これらの事から抜毛により生じた空洞の辺縁の細胞は、その機械的刺激により傷つき生体にとっては不必要な細胞となったため、アポトーシスに陥り除去されるものと考えられた。しかし、アポトーシスに陥る細胞がBrdUにも陽性であり、アポトーシスに陥っている細胞がDNA合成を行っているとの結果である。この事は矛盾であるが、一方、生体では他の細胞でも同一の所見が知られている。すなわち、アポトーシスとDNA合成の最初のステップは同一の経路を通るというものである。したがって、毛嚢組織でも抜毛によりそのステップを通る細胞が出現したものと考える。 以上より抜毛により毛嚢下部の毛幹があった部分に空洞が生じ、それらの細胞はアポトーシスに陥り除去され、全ての毛嚢が一旦同じステージとなり、何らかの誘導で一斉に毛嚢が増大し、よく同一した毛周期が得られるものと考えられた。
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