FDGを用いるポジトロン断層撮影法(PET)検査は、悪性腫瘍の鑑別診断、治療効果判定などにおいてきわめて有効性の高いことが報告されている。しかし、最近の研究により、FDGは悪性腫瘍への高い集積性を示すが、一部良性疾患にも集積することが明らかとなってきた。これらの鑑別診断をより的確に行うには、悪性腫瘍や良性疾患へのFDGの集積機序を明らかにすることが必須である。 本研究では、実験的腫瘍を移植した腫瘍モデル、テレピン油を塗布した炎症モデル、細菌感染させた感染モデルラットを用い、FDGの腫瘍、炎症組織への集積と膜輸送タンパクの関連を予備的に検討した。さらに、FDGの腫瘍・炎症への集積に及ぼすインシュリンあるいはグルコース負荷の影響を検討した。 1.腫瘍及び両炎症巣には、膜輸送タンパク(GLUT)のtype-1及びtype-3が高く発現していた。これらのGLUT発現には、腫瘍と炎症の間で大きな違いは認められなかった。 2.インシュリン負荷により腫瘍及び両炎症へのFDG集積は対照の半分程度に低下した。両炎症へのFDG集積はグルコース負荷によっても約50%低下したが、腫瘍集積に及ぼすグルコース負荷の影響は比較的小さかった。これらの結果から、グルコース負荷が悪性腫瘍と良性疾患の鑑別診断の手がかりになる可能性が示された。
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