子宮内膜癌の筋層浸潤診断におけるMRIの有用性は確立、している。しかしT2強調画像で子宮の3層構造が不明瞭化している症例にあっては、癌の内向性発育とその他の要因による変化を区別することは時に困難である。本研究では119例の病理組織学的に診断の確定した子宮内膜癌症例のMR所見を遡及的に検討し、junctional zoneが拡大・不明瞭化した31例に対し造影早期のjunctional zoneの増強効果と病理組織所見、腫瘍の血管新生の程度を反映すると思われる細動脈密度と対比した。組織学的癌浸潤群では器質的異常を認めなかった群、腺筋症群に比べjunctional zoneの漿膜側筋層に対する細動脈密度比が有意に低かった。これを反映して器質的異常を認めなかった群、腺筋症群は造影早期のjunctional zoneの増強効果が良好、癌浸潤群は不良な傾向にあった。但し腺筋症と癌の併存する2例では造影良好群と不良群に1例ずつ分かれた。正常の子宮筋層は内膜間質に比べhypervascularな組織であり、癌組織の血管新生にも関わらず癌化した内膜間質よりなお細動脈密度が高いことから、dynamic MRIにより癌浸潤部はむしろ造影不良域として描出される。一方、子宮腺筋症では異所性内膜間質の細動脈密度が正常子宮筋層並に増加しており、造影早期における病変と健常部とのcontrastは不良である。したがってホルモン環境や子宮収縮など非器質的要因または子宮腺筋症によるjunctional zoneの拡大と癌浸潤によるそれとはdynamic MRIにより鑑別可能である。しかし少数ながら腺筋症を発生母地とする内膜癌や腺筋症病巣に沿って筋層浸潤を示す内向型癌があり、こうした症例ではでは両者の混合割合により細動脈密度比が変化することからdynamic MRIによる鑑別には限界がある。
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