1.血管内膜損傷モデルヘの放射線照射:全身麻酔下に資料固定具に固定した家兎の片側腸骨動脈に対してX線透視下で、3Fr.の心臓冠状動脈用のバルーンカテーテルを用いて、バルーンPTAを7気圧1分間の拡張、1分間の休止を3回繰り返し内膜損傷モデルを作成した。PTAの際に透視下にて家兎の体表面にマジックペンにより照射野中心と照射野(2×3cm)を設定した。その後、PTAを施行していない反対側の腸骨動脈側でも上記と同様にバルーンカテーテルを用いてX線透視下に昭射野中心と照射野(2×3cm)を設定した。12MeVの電子線を用いて8から12Gyの外照射を行った。照射野は上述のごとく、一律幅2cm、縦長3cmとした。照射後2から3日飼育後、静脈麻酔下に開腹して、腸骨動脈を摘出した。その後、光学顕微鏡にて観察した。観察の結果、PTA後照射を行わなかった血管では、傷害部位近傍での損傷治癒過程と思われる内膜肥厚像や遊走細胞の出現が見られた。しかし、PTA後照射を行った血管では上記のような損傷治癒の過程と考えられる内膜肥厚像や遊走細胞の出現が抑制される傾向にあった。なおこの実験の照射量では、損傷治癒の抑制は照射量による差異は見出せなかった。 2.放射線照射後の再狭窄についての検討と今後の課題:上記の実験結果からは、損傷治癒過程の抑制は内膜から中膜の変化が特に抑制された印象を受けたが、これらの機序については、光学顕微鏡の観察のみでは解明できなかった。特殊染色や電子顕微鏡レベルでの検討も必要であると考えられた。今後、この損傷治癒過程を抑制する機序を明らかにすることが課題であると考えられた。また長期飼育しての損傷治癒過程の抑制がどのように行われているかの確認も今後の課題と考えられた。さらに実際の透析用シャント血管狭窄時にPTAを施行し、その後放射線照射を行うという臨床応用を行うことも今後の課題である。
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