現在行われているホウ素中性子捕捉療法では、患者の血中ホウ素濃度と治療中に測定した中性子束密度を用い、事前に行った実験や計算をもとに吸収線量を推測している。我々の研究グループでは、治療中にリアルタイムで吸収線量を直接評価するために、PG-SPECT(Prompt Gamma-ray Single Photon Emission Computed Tomography)システムを提案し、その開発に取り組んでいる。 PG-SPECTシステムは中性子線とγ線が多量に存在する治療照射場内に設置されるため、有効な測定を行うためには、コリメータシステムの最適化が必要である。そこで、コリメータのパラメータを決めるに当たって、測定の統計誤差を考慮した最適指数を考案し、パラメータの最適化を行った。 この結果をもとに組立式タングステンコリメータを作成し、計算と実測との比較を行った。予算の都合上、コリメータの一部しか製作できなかったが、計算値と実測値はほぼ一致しており、最適指数による最適化が妥当であったことを確認した。 また、PG-SPECTに装備する検出器として、(1)中性子のダメージ、(2)検出効率、(3)エネルギー分解能、(4)バックグラウンド除去、(5)冷却の5項目について検討を行った結果、BGOシンチレーション検出器が最も有利であるという結論に達した。そこで、サイズの異なる3種類のBGOシンチレータを購入し、最適な形状について検討した。その結果、シンチレータの形状は、円柱形よりも直方体の方がエネルギー分解能が良いことが分かった。また、シンチレータの長さが短くなるほど、エネルギー分解能が良くなるという傾向が見られた。 今後は、これらの結果を踏まえて、BGOシンチレータとタングステンコリメータを組み合わせた実験を行い、PG-SPECTシステム実現へ向けて研究を継続していく予定である。
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