[検討項目]12年度の研究にて、MRIで血液のT2^*を測定することにより半定量的な血液酸素飽和度測定が可能となったが、精度向上のため引き続き1.受信コイルの検討を行った。酸素消費量測定の予備実験として、2.T2^*値と酸素飽和度の関係の近似曲線を求めた。3.膝の屈伸運動に伴う下肢の酸素消費量の変化を大腿静脈における血流量とT2^*値測定により検討した。 [方法]1.受信コイルの検討は、固定アガロースゲルファントムを用いT2^*測定の精度を、表面コイル・フェーズドアレイコイル・全身コイル間で比較した。2.血液のT2^*値と酸素飽和度との関係は、血液を様々な程度に酸素化し、自動血液ガス分析装置で測定した酸素飽和度とMRIで測定したT2^*値の関係を近似曲線化した。3.膝の屈伸運動に伴う酸素消費量の変化は大腿静脈においてT2^*値と血流量を運動開始前と運動開始3分後に測定し、動脈中の酸素飽和度は一定として酸素消費量を計算した。 [結果]1.受信コイルは現状では感度分布の点より全身コイルが最も精度良好であった。2.血液の酸素飽和度(x)と血液のT2^*値(y)の関係の近似曲線は酸素飽和度が65%から100%の間でy=-0.0025x^3+0.6378x^2-50.729x+1292.7(R^2=0.8176)であった。3.大腿静脈の運動前のT2^*値は右61ms、左55msで血流量は右184ml/min、左221ml/minであった。計算された酸素飽和度は右87%、左85%である。左足のみ運動させるとT2^*値は右72ms、左37msで血流量は右289ml/min左414ml/minであった。酸素飽和度は右90%、左80%となる。動脈血の酸素飽和度を98%、ヘモグロビン量を14g/100mlとして計算した酸素消費量は運動の前後で、運動した左足は5.4mlから14.0mlへ増加したが、運動していない右足では3.8mlから4.4mlであった。 [考察]本法は血液中に溶解している酸素量が評価できない点で正確な評価とはいえないが、左右差の比較や運動などの負荷前後の検討には非侵襲的な評価方法になり得ると考えられる。臨床応用に至るには精度の向上が望まれる。
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