ステントが導入され、骨盤内動脈や頚部の動脈閉塞性病変などに対して従来よりも安全にPTAを行うことができるようになった。我々は骨盤部領域の動脈閉塞性病変に対しては、再発例や完全閉塞例を除き原則としてまずballon PTAを行うという方針で治療している。今回、26例37病変の骨盤内動脈閉塞、あるいは狭窄に対しステント留置を行い、ステント治療の短期成績、及び合併症を検討した。ガイドワイヤーで閉塞部を通過できた症例における初期成功率は100%、2次開存率も100%であった。軽度の合併症が10%にみられた。骨盤内動脈狭窄性病変に対するステント留置は有効な治療法であるが、厳重に経過観察を行い必要な場合には速やかに追加治療を行うことが望ましいと考えられた。 骨盤内動脈以外の領域におけるステント治療はまだ比較的限られている。我々は、内頚動脈、椎骨動脈、鎖骨下動脈、腎動脈、浅大腿動脈に対し、ステント治療を行った。治療適応については、臨床症状、臨床データのほか、脳血流シンチや狭窄部での圧較差などを総合的に判断し決定した。浅大腿動脈の完全閉塞例を除き、前例でステント留置に成功し、圧較差も消失し、術前にみられた症状もいずれも著明に改善した。ステント留置は腸骨動脈領域以外にも有効であるが、適応は厳重に決定しなければならない。また、長期予後に関してもさらに検討する必要がある。
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