平成13年度も引き続き、完全閉塞、バルーンPTA後の再発、高度の石灰化や壁不整を伴う病変などに対しては最初からステント挿入(primary stenting)、それ以外の狭窄病変に対してはまずバルーンPTAを行い、バルーンPTA後の高度の内膜解離や有意の圧較差が残存した場合のみに引き続きステント挿入を行なった(secondary stenting)。骨盤・四肢領域では、バルーンPTAもしくはステント留置を91病変に試みた。狭窄部の圧較差を測定し、10mmHg以上の圧較差が存在した場合は効果不十分と判定した。また圧較差が軽度の場合は、ミリスロール0.05mg/生理食塩水10mlを狭窄部の近位から動注し、薬剤負荷を行い有意の圧較差かどうか判定した。91病変中ステント留置を行ったのは47病変であり、内secondary stentingは10病変のみであった。治療後の観察期間は1-36ヶ月(平均14.6±10.4ヶ月)である。ステント治療群において再発に対して追加治療を要したのは2病変であり、再狭窄に対するステント内へのステント留置、薬剤自己中止後のステント閉塞に対する溶解療法の1例ずつであった。一方PTA群では追加治療としてステント挿入を行った例が2病変、臨床的に再発が疑われて追加治療を予定している病変が3例あり、これらは打ち切りとした。経過観察において、バルーンPTA群とステント挿入群問に開存率の有意な差は認められなかった。 完全閉塞例、バルーンPTA後の再発例、バルーンPTAで効果が不十分な例に対して、ステント挿入は有効な治療法である。しかし、バルーンPTAを試みた狭窄病変においてsecondary stentingが必要だったものは13.0%に過ぎず、今後さらに長期予後を含めて検討する必要はあるものの、複雑でない狭窄病変の場合はまずバルーンPTAを試みるのが望ましいと考えられた。
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