本研究は、放射性同位元素標識薬剤[11C]MP4A(11Cメチル4ピペリジルアセテイト)を用いた脳AchE(アセチルコリンエステラーゼ)活性のPET(ポジトロンCT)測定を具体的な対象と想定し、3次元モードPET測定における問題点を特にPET装置の物理的特性という側面から検討することを目指している。昨年度から引き続き本年度は、視野外放射能に起因する散乱線や偶発同時計数の問題点をファントム実験やモンテカルロシミュレーション計算により定量的に分析してきた。ファントム実験では、3種類の厚さ、2種類の内径の鉛製のエンドシールドをCTI/SIEM ENS社のECAT EXACT HR+装置に一時的に設置し、装置視野外に一様放射能溶液を含んだ標準円筒ファントムを置いた場合の物理特性を調べた。その結果、シールドが薄い場合にはシールド自体からの散乱線成分の寄与が見られ、特に内径が小さくなりシールド面積が増加するにともないその寄与も増加することが分かった。ただし、10mm以上の厚さにする必要はない事が分かった。エンドシールドでは形状や設置位置の観点から被験者への精神的負担や視界を遮る点などが問題となる。それら欠点を避けるため、現在、ボディーシールドについて同様なファントム実験を始めたところである。一方、モンテカルロシミュレーションプログラムについては、原子核・素粒子実験の分野における経験を基にGEANTの利用と調整をさらに進めた。このような視野外放射能の問題をはじめとする3次元モード測定における様々な問題は、MP4Aを用いたPET検査に限らず、高感度PET装置全般にあてはまる問題である。そして本研究は、PETの有効性を今後さらに高めるために新しい次世代PET装置を開発することまでも視野に入れたものである。
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