本研究課題を行うにあたって、どのような脳機能画像法を選択するかが始めに解決されねばならなかった。人格特性を評価するにはどのような画像法が最適かを決定するため、本研究課題で用いることができる方法をいくつか検討した。まず精神疾患患者の脳機能画像をSPECT(シングルフォトンエミッショントモグラフィ)で撮像した結果をまとめ、そこで得られた結果をケースレポートとして投稿し受理された(別刷り)。しかし、この結果から人格研究にSPECTを用いることには、時間解像度の低さと侵襲性の高さから限界があることが明らかとなった。これはPET(ポジトロンエミッショントモグラフィ)も同様であった。簡便性、非侵襲性、時間解像度の高さ、を考慮すると、近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy;NIRS)が最も有用であることが考えられた。そこでNIRSによる脳血流測定について予備検討に入った。まず手指タッピングという運動課題時の頭頂部側頭部酸素ヘモグロビン変化を、多チャンネンルNIRSを用いて検討した。この結果、運動に対応して局所脳血流量の変化が時間的経過に応じてとらえられた(昨年の医用近赤外線分光法研究会で発表)。これらのパターンは一次運動野、運動前野、体性感覚野に対応していた。全体として運動手と対側半球の賦活が多かったが、左半球は両側支配の傾向が見られた(生物学的精神医学会で発表予定)。これを受けて、人格特性検査および不安検査を同時施行し、脳血流変化部位、変化量、時間的パターンとの相関を分析した。この結果、新奇希求と固着という2つの人格気質特性が、それぞれ左半球の脳血流と正相関、両側半球血流と負相関を示した(生物学的精神医学会で発表予定)。これらの結果から、特定の人格気質特性と脳血流変化パターンとの間に関連性があることが示唆された。現在、何かしらの認知的課題を施行した場合にも同様な両者の関連性がみられるかを検討すべく、準備を進めている。
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