研究概要 |
初年度及び次年度から得られたデータ結果より、アーチファクトの混入が少なく、sleep stage 2まで到達した被験者(健常若年成人10名、健常高齢者7名、アルツハイマー型痴呆13名、脳血管性痴呆13名)の結果を選択しデータ解析に用いた。眼球運動と脳波活動の重心,global field power(以下GFP)について相関分析を行い、加齢および各疾患における相関関係の差異を検討した。また、覚醒度の程度によりstagingをおこない、各stageの脳波活動の重心の平均位置をもとめ、多変量分散分析を用いて覚醒度の変化に伴う周波数空間構造に与える各群の影響を検討した。さらに各区間ごとの重心の移動の平均と標準偏差を求め、分散分析により周波数空間構造の変動に与える各群の影響を検討した。 解析結果から、加齢に伴いデルタ帯域及びベータ帯域の脳波活動の重心の変動が大きくなり、さらには脳血管性痴呆の上下方向におけるアルファ波高域とベータ波低域の脳波活動の変動は健常若年成人、健常高齢者およびアルツハイマー型痴呆より大きいことが確認された。また、急速眼球運動の出現頻度と脳波各帯域のGFPの変化について相関分析をおこなったところ、健常若年成人、健常高齢者およびアルツハイマー型痴呆においては眼球運動とGFPの間に有意な相関が多く認められたが、脳血管性痴呆ではほとんど認められなかった。 今回の研究では、上記の結果と意識障害の既往、痴呆の重症度とは関連が認められなかった。脳波活動の変動の大きさ(不規則さ)、眼球運動と脳波活動の連動性の低下は、脳血管性痴呆の特異的障害かもしれない。しかし、脳血管性痴呆では意識障害が多いことも知られている。今後症例をさらに増やし、脳波活動の変動の大きさ(不規則さ)、眼球運動と脳波活動の連動性の低下と意識障害、痴呆症状との関連を検討していく予定である。
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