サーカディアンリズム関連遺伝子(per、tim、clk、bmal1、cry)、いわゆる時計遺伝子の構造異常が、睡眠覚醒リズム障害(睡眠相遅延症候群や非24時間睡眠・覚醒症候群などの疾患)の原因であるという仮説の下に、それら疾患の罹患者のサーカディアンリズム関連遺伝子の構造異常を検索中である。これまで、睡眠覚醒リズム障害罹患者および健常対照者の協力を得て、50名余の末梢血の供与を受け、ゲノムDNAの抽出を行った。それら罹患者のゲノムDNAを対象に、per、tim、clk、各遺伝子のタンパク質コード領域の大半をSSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法およびダイレクトシーケンシングによって検索した。しかし、現在までのところ、未だアミノ酸レベルに反映する(新たな)遺伝子変異の特定には至っていない。このことは、少なくともこれら3つのサーカディアンリズム関連遺伝子(per、tim、clk)から作られるタンパク質の構造異常が、睡眠覚醒リズム障害の原因でないことを示唆している。今後は、bmal1およびcry遺伝子上(タンパク質コード領域)での構造異常の検索を早急に完了するとともに、コード領域以外のプロモーター領域などの構造異常、つまり、それらタンパク質の発現量の調整異常等が疾患の原因となっている可能性を検討するため、順次それら領域にまで検索範囲を拡大して原因遺伝子の特定を試みる予定である。
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