本研究の目的は不安障害(パニックディスオーダー)の発症・病態に関与する候補遺伝子を検索・同定することにある。我々は近年、不安障害の新たな病因候補遺伝子として1)コレシストキニン(CCK)系、2)アデノシン(AD)系に注目している。 1)CCK系ではCCK遺伝子、CCKB受容体遺伝子の疾患への関与について検討を進めている。(a)CCK遺伝子については遺伝子変異検索を行い、報告されている-36C>T、-188A>Gの2つの変異を確認し、新たにshort tandem repeat(STR)と-345G>Cとの2つの変異を発見した。相関研究では発見したSTRについて特定範囲のallele lengthを持つ群で不安障害患者と正常対照群との間にallele頻度、genotype頻度の有意な差を認め、さらにhaplotype解析ではSTR(379-383bp)-(-188G)-(-36T)haplotypeが不安障害患者に多く見られるとの結果を得た。(b)CCKB受容体についてはcDNA全領域について遺伝子変異検索を行い、報告されている1550G>A、1962T>C、1985G>A、2491C>Aを確認し、さらに新たな変異として3263G>C、3264A>Gを発見したが、相関研究ではこれらの変異の不安障害への直接的な関与はないと思われた。 2)AD系ではアデノシン2a受容体(A2aAR)について不安障害への関与が示唆されている1083C>Tを含む4箇所の遺伝子変異について相関研究を行い、いずれの変異も疾患への直接的関与の可能性は低いことを報告した。 現在、1)(a)の結果を得てCCK遺伝子のプロモーター領域についての機能解析を行っている。また、新たにいくつかの不安障害に関与する可能性のある染色体領域と病因候補遺伝子について分子遺伝学的検討を進めているところである。
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