研究概要 |
転写因子GATA-1は赤芽球系細胞や巨核球、マスト細胞、好酸球などの造血系細胞および精巣のSertoli細胞に限局して発現し、それぞれに特異的な転写制御をうけている。我々の研究室ではすでに,GATA-1の血球型プロモーター特異的なターゲティングマウスを作成し,GATA-1が赤血球、巨核球の終末分化に必須であることを明らかにしている。さらに,胎児型,成人型造血に必須なGATA-1の制御領域を用いて個体に発現させたGATA-1が,このターゲティングマウスの胎生致死をレスキューする事を確認し,この制御領域のみで個体発生に必要なGATA-1を発現させるために十分であることを示した。さらに,このGATA-1の制御領域を用いてGATA-1の機能ドメインを検討し,GATA-1のN末端転写活性化ドメイン,N側フィンガー,C側フィンガーのいずれもが,個体発生におけるGATA-1の機能発現に重要であることを明らかにした。一方,胚性幹細胞(ES細胞)の試験管内分化実験の結果より,GATA-1が積極的に細胞増殖の抑制に働いていることを明らかにした。さらに,GATA-1へテロ欠損マウスはGATA-1を発現していない血液細胞の異常増殖による造血系腫瘍を高率に発症した。このことは,GATA-1が成人型造血の恒常性維持に重要であることを,個体レベルで明らかにしたものである。
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