| 研究概要 |
慢性骨髄性白血病をはじめとする腫瘍において認められる染色体異常と、相同組換え遺伝子との関連を調べる目的で、当研究室でクローニングした新規ヒト相同組換え遺伝子RAD54Bの機能解析を行った。Rad54Bは、Rad51による組換え反応を促進する作用を持つRad54と相同性を有している。Rad54B蛋白質を精製し生化学的機能を検討したところ、Rad54BはRad54同様2本鎖DNA依存性ATPase活性を有し、1本鎖および2本鎖DNAと結合することがわかった。一方酵母にはRAD54類似遺伝子RDH54/TID1が存在する。Rdh54/Tid1はRad51,Dmc1と会合し、Rad54が姉妹染色分体を介した組換えに関与するのに対して、相同染色体を介した組換えに関与することが知られている。Rad54BとRdh54/Tid1は、Rad54との相同性が低いN端側の領域で相同性を有することから、RAD54BがRDH54/TID1のヒトホモローグである可能性を検討した。その結果Rad54BがヒトRad51,Dmc1と会合することがわかり、RAD54BはRDH54/TID1のヒトホモローグであると考えられた。このことは、Rad54Bが相同染色体を介した組換えに関与している可能性を示唆している。相同染色体を介した組換えは主に生殖細胞で認められ、体細胞における組換え反応は主として姉妹染色分体を介して起こると考えられている。しかし腫瘍において認められる染色体転座などの異常は、姉妹染色分体以外の染色体間での組換えの結果である可能性があり、Rad54Bがこの過程に関与していることが予想されるため、今後この可能性を検討していく予定である。
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