慢性腎不全患者血清中でその増加が指摘されているN^G-monomethyl-L-arginine(L-NMMA)の、ヒトエリスロポエチン(EPO)遺伝子発現に対する作用について解析を進めた。その結果、1)L-NMMAによりヒトHep3B細胞におけるEPO発現が抑制される、2)この場合、GATA-2転写因子のmRNA発現量、DNA結合活性が増加している、3)GATA-2転写因子はヒトEPO遺伝子プロモーター上に存在するGATA配列を介してEPO遺伝子の発現を負に調節する、等が明らかとなった。さらに、これらのL-NMMAによる諸作用、すなわちGATA-2転写因子の発現増加およびEPO遺伝子の発現低下等の現象はL-アルギニンの投与により消失した。このことから、L-アルギニンの腎性貧血治療における有用性が示唆された。 一方、EPO遺伝子の発現調節機構についてさらに深く理解するため、トランスジェニックマウスあるいはEPO欠失マウスの作成を念頭にいれてマウスのEPO遺伝子の構造、機能について解析を進めた。その結果、マススEPO遺伝子プロモーター上には、ヒトEPO遺伝子プロモーターと同様にGATA配列の存在が認められた。さらに、プロモーター機能を検討するため、EPO遺伝子プロモーターとルシフェラーゼ遺伝子との融合コンストラクトを作製し、Hep3B細胞に遺伝子導入した。その結果、マウス遺伝子においてもGATA-2転写因子がGATA配列を認識し、EPO遺伝子を負に調節していることが明らかとなり、種を越えてGATA-2転写因子がEPO遺伝子発現に深く関わっていることが示された。
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