研究概要 |
C/EBPεは好中球分化、特に骨髄球以降の分化に必須の転写因子であり、好中球の形態変化やペルオキシダーゼ・ラクトフェリン・好中球エラスターゼの発現に重要である。我々はG-CSFによる好中球分化においてC/EBPεが重要なターゲットとなっていることを以前明らかにし報告したが、今回C/EBPεによる好中球分化誘導機構をさらに明らかにするため、C/EBPεとエストロゲンレセプターのリガンド結合ドメインの融合分子(C/EBPε-ER)を作成しその効果を検討した。IL-3依存性マウス骨髄細胞株LGにC/EBPε-ERを導入し、その活性を4-hydroxy tamoxifen(4-HT)で誘導したところ、細胞増殖は急激に抑制され、約3日で細胞はG1期に静止した。これらの細胞は形態学的に成熟好中球に分化しており、分化抗原であるMac-1を発現していた。この際一部の細胞はアポトーシスをおこして死滅しているのが観察された。これらより、C/EBPεは単独で細胞増殖の停止、形態変化、およびアポトーシスを引き起こすことが明らかとなった。さらにこの時の細胞周期・アポトーシス関連タンパク質をウエスタンブロットにて解析すると、刺激後4日でサイクリンD2,A,EおよびCdk4,6が急激に減少し、逆にp27の急激な増加を認めた。これと同時に、IL-3存在下にも関わらず、アポトーシス抑制分子であるBcl-2,Bcl-X蛋白の減少およびCaspase3の活性化が認められた。以上より、C/EBPεは細胞の形態変化・機能的成熟だけではなく、分化に伴う細胞増殖の停止やアポトーシスの誘導にも関与していることが示唆された。
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