研究概要 |
平成11年10月より13年3月までの18ヶ月で,真性多血症/本態性血小板血症患者骨髄細胞7検体を凍結保存した.ENB adaptor付加cDNA libraryは,合成キットが高価なため10検体到達時点でまとめて作成する.PCRプライマーは,FGF1〜20までの特異的プライマー各1〜2組ずつおよびデジェネレーテッドプライマー数組を既に作製済みである.また,臨床検体が集まるまでの時間を利用して,手技の熟達等の目的を兼ね,造血器腫瘍培養細胞株を対象とした検討を進めている.細胞株は林原研究所藤崎細胞センター,JCB等から分与,約40株を培養,RNAを抽出した.同時に造血器腫瘍患者骨髄細胞13検体を凍結保存した.さらに当施設では悪性リンパ腫リンパ節検体の豊富な蓄積がある.ここで悪性リンパ腫において一部のFGFの血清中濃度が予後因子となるとの知見より,悪性リンパ腫細胞株に対して幾つかのFGFの発現をRT-PCR法で検討中である.その中で,染色体11q13領域にがん遺伝子CyclinD1に近接してFGF19が位置しているとの情報を踏まえ,t(11;14)(q13;q32)転座B細胞腫瘍細胞株においてその発現をRT-PCR法で検討したところ,偶然にこれらの細胞株でのみ発現が確認される,予想されるサイズと異なる約1.4kbの転写物を見い出した。t(11;14)転座は予後不良のマントル細胞リンパ腫や多発性骨髄腫の多くに認められる染色体異常で,11q13領域に位置するがん遺伝子Cyclin D1の過剰発現がその病態に関与している。一方で,FISH等で転座が認められるにも関わらずCyclin D1の過剰発現が見られない症例も多く,この領域内にその他の責任遺伝子が存在する可能性が示唆されている。平成13年度は、主に骨髄増殖性疾患の検討をすすめるが、上記転写物の病態への関与についても,本研究課程での副産物として検討していく.
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