【目的】我々はこれまでにホメオボックス遺伝子DLX-7がある種の白血病細胞の増殖やアポトーシスの制御に関わっていることをアンチセンスの系を用いて明らかにしてきた。そこで今回、DLX-7遺伝子のさらなる機能解析を目的として、以下のごとく遺伝子導入株を作成し、検討を行った。【対象と方法】マウスIL-3依存性細胞株BaF3を用い、DLX-7発現ベクターをelectroporationにより遺伝子導入を行い、安定株を得た。MTT変法にて細胞増殖能を検討し、TUNEL法にてアポトーシス細胞の検出を行った。各種接着分子の発現をFACSにて解析した。blocking antibodyとして、抗integrin β1抗体、抗integrin α4抗体、抗integrin α5抗体、抗integrin β2抗体、抗LFA-1α抗体、抗LFA-2抗体、抗ICAM-1抗体、抗ICAM-2抗体を用い、阻害実験を行った。【結果】安定したDLX-7遺伝子導入株を3クローン得た。これらの細胞株はIL-3を含んだ培池ではcontrolと比較して増殖能に変化はなかったが、IL-3非存在下においてIL-3非依存性増殖能を獲得した。さらにTUNEL法によりこれらはアポトーシスからの回避によるものであるとこが明らかとなった。またDLX-7遺伝子導入株は形態学的にaggregationを形成するという特徴が見られた。FACSによる検討ではICAM-1、ICAM-2の強い発現誘導が見られた。抗ICAM-1抗体による阻害実験にてaggregation formは解除された。IL-3非依存性増殖能に対する効果を検討したところ、抗ICAM-1抗体が増殖を特異的に抑制することが明かとなった。【結語】DLX-7遺伝子導入はアポトーシスの抑制と細胞凝集をきたすが、その生物学的制御にはICAM-1の発現誘導を介した機序が想定された。
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