ウサギ腎尿細管を単離潅流し、正味の重炭酸吸収量(JHCO_3)、水の吸収量(Jv)および細胞内pHを測定した。この尿細管の基底膜側に細胞膜に不透過な炭酸脱水酵素阻害薬である、p-flurobenzyl-aminobenzolamide(10μM)を加えたところ、JHCO_3は平均約60%(75±1→29±3pmol/min/mm)、Jvは約30%(0.65±0.04→0.04±0.04pmol/min/mm、どちらも有意に減少した。また、これらは基底膜側に1mg/mlの炭酸脱水酵素を加えると元のレベルまで完全に回復した。細胞内pHは同薬物投与により約0.2単位(7.15±0.03→7.34±0.03unit)有意に上昇し、1mg/mlの炭酸脱水酵素添加により回復した。以上のことから、以前報告されていたような腎尿細管細胞質および管腔膜のみならず、尿細管基底膜にも炭酸脱水酵素活性が存在し、重炭酸および水の輸送に関与していることが明らかとなった。この基底膜に存在する炭酸脱水酵素は、おそらく腎尿細管基底膜周囲局所での重炭酸イオン濃度を減少させ、基底膜に存在するナトリウム・重炭酸共輸送体活性を維持することに役立っていると考えられる。今後は尿細管内pHや尿細管外液のpHの変化を測定することで、これらの炭酸脱水酵素によるDisequilibrium-pH生成機構を解明する予定である。
|