研究概要 |
【目的】高血圧の発症機序の一つとして、交感神経中枢である延髄吻側腹外側(RVLM)ニューロンが重要である。私どもはWKYおよびSHRの摘出脳幹-脊髄標本に対しホールセル・パッチクランプ法を適用し、アンジオテンシンII(AII)およびAT1受容体拮抗薬(candesartan,Cand)に対するRVLMニューロンの反応の違いを検討した。【方法】1、生後4日目までのWKYとSHRの延髄から脊髄までの神経系を摘出し、パッチクランプにてRVLMニューロンの静止膜電位を細胞内記録した。灌流液に 2、AII(6μM),3、Cand(0.12μM)を加えた。4、AT2受容体拮抗薬(PD123319,60μM)で10分灌流後にCandを、5、Candで10分灌流後にAIIを加えた。【成績】RVLMニューロンの静止膜電位は、WKYで-53±2(M±SD)mV(n=33)、SHRでは-49±1mV(n=56)であった。発火頻度は、WKYで4.1±0.5/s、SHRでは5.1±0.3/sであった。AIIによるRVLMニューロンの脱分極は、WKYの1.8±0.8mV(n=8)に対し、SHRでは8.9±1.8mV(n=8)と有意であった。このSHRの脱分極はCand前投与により1.2±0.7mV(n=5)と著明に抑制された。Candのみの灌流によりSHRでは4.9±1.1mV(n=5)と有意な過分極を認めたが、この反応はPD前投与により消失した。【結論】SHRのRVLMニューロンの方がWKYに比べて静止膜電位が浅く、発火頻度が速かった。また、SHRの方がAIIに対してより高度の脱分極を認めた。SHRでCandにより過分極したことは、内因性AIIがRVLMニューロンのAT1受容体に結合し、脱分極、速い発火に寄与していることを示した。また、この過分極がPD前投与で消失したことは、AT2受容体を介する作用が関与していることを示唆した。
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