[目的]急性圧負荷はレニン分泌を抑制するが、慢性圧負荷は培養傍糸球体細胞内での不活性レニンの活性化を抑制し、その機序に細胞内カルシウムプールが関与する。本研究では、この反応におけるphospholipase依存性について検討した。[方法]ラット腎より分離した初代培養傍糸球体細胞を、ヘリウムガスを用いた加圧装置内で12時間培養し活性レニン分泌率(RSR)、細胞内活性レニン量(ARC)、細胞内総(活性+不活性)レニン量(TRC)を測定した。[結果]大気圧で培養した細胞に比べて大気圧+40mmHgの加圧下で培養した細胞のRSR、ARCは有意に低下していたが、TRCは圧によって影響を受けなかった。これより圧負荷による細胞内レニンの活性化抑制が示された。細胞をphospholipaseC阻害薬であるU73122(10μM)及びその対照薬のU73343(10μM)で前処置し大気圧及び大気圧+40mmHg下で培養すると、U73343処置群では無処置の対照細胞と同様な結果が得られたが、U73122処置群では、圧によるRSR低下反応は抑制され、ARC低下反応は維持されたが、TRCは圧によって影響を受けなかった。さらに、細胞をphospholipaseD阻害薬である4-(2-aminoethyl)-benzenesulfonyl fluoride(100μM)で前処置し大気圧及び大気圧+40mmHg下で培養すると、圧によるRSR低下反応が観察されたが、ARC低下反応は消失した。TRCは圧によって影響を受けなかった。[考察]慢性圧負荷による細胞内レニンの活性化抑制機序にphospholipaseD依存性経路が関与することが示された。
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