研究概要 |
申請者は尿細管細胞死におけるカスパーゼの役割及びその抑制の可能性について研究している.尿細管細胞死の刺激としてcAMPの枯渇及び薬剤性障害としてシクロスポリンAを用いている.これらの刺激により尿細管細胞(ヒト近位尿細管細胞及びMDCK細胞)において細胞死の亢進及びカスパーゼ活性の上昇を認めた.これらはカスパーゼ阻害剤にて抑制されることは認めたが,臨床応用は難しいと考え,デキサメサゾン及びHGFを用いてさらに検討した.これらの前処置後cAMP枯渇やシクロスポリンA投与を行うと,細胞死は抑制されカスパーゼ活性の上昇も抑えられることを認めた.現在この働きの詳細を調べる目的で,カスパーゼの活性化を制御していると考えられているbcl-2ファミリーの発現を蛋白質レベルで確認し,またミトコンドリアの障害の指標と考えられているcytochrom cの放出について検討している. またすでに障害を受けた尿細管細胞について,細胞死抑制剤を投与してもおこってしまった障害は抑制できないことより,新しい尿細管細胞を移植することを考え,尿細管細胞の分化,誘導の可能性について検討している.現在骨髄間葉系幹細胞を用い,既知の成長因子や分化誘導因子として知られているactivinAなどを利用して検討している.dexameth asone,activinA,bFGF,TGFの投与により細胞形態変化を認めたが,細胞分化マーカーの検討より,尿細管細胞ではなく神経系の細胞である可能性が高いと現在考えている.今後異なる誘導法を用いて尿細管細胞が分化誘導できないかの検討を更にすすめていく予定である.
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