研究概要 |
我々はこれまで炎症糸球体に効率良く遺伝子を導入するシステムの開発に成功し(T.Yokoo et al.Hum.Gene Ther.1998)、これを用い急性糸球体腎炎の進行を2週間にわたって抑止しうることを報告した(T.Yokoo et al.Hum Gene Ther.1999)。このシステムに正常の免疫応答を営むために罹患部位、罹患時期のみに抗炎症効果をもたせるスイッチシステムを導入し炎症特異性を向上させることを目的にCre/loxPシステムを用いた。つまり炎症を惹起させる炎症性サイトカインが強発現するような条件下でCre蛋白を発現させ、抗炎症性遺伝子を誘導することにより炎症効果を相殺させる系を確立した。まずIL-1βプロモーターによりCreを発現する制御遺伝子とCre発現によりレポーター遺伝子(LacZ)を発現する標的遺伝子をもつアデノウイルスを作製し、マウス骨髄細胞より分化させた担体細胞に遺伝子導入した。この共感染細胞はin vitroでIL-1βプロモーター作動時にLacZを発現することを確認した後、マウスに尾静脈を介して輸注した。このマウスに抗基底膜抗体誘導腎炎を惹起したところ、炎症非特異的に脾臓に存在する担体細胞はレポーター遺伝子を発現していないが、炎症糸球体に集族した担体細胞のみ発現していることが確認された。つまり炎症特異的スイッチシステムがIL-1βプロモーターで作動するCre/loxPシステムによりin vitro,in vivoで可能となったことが示された。現在抗炎症性サイトカインであるIL-1RaをCre/loxPで誘導することにより腎炎が炎症特異的に抑制されるか確認する研究を進めている。
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