研究概要 |
今回の研究の目的は、早産児の損傷肺において、1)在胎何週あるいは出生後何週からHGFが産生されるか、2)気管吸引液中のHGF濃度の推移を明らかにすることである。 対象は、24例の慢性肺疾患(以下CLD)児。平均在胎期間は24.7±1.4週、平均出生体重は674±173gであった。CLDの厚生省分類による内訳は、1、2型が16例、3型が6例、5、6型が2例であった。これらの症例に対し、出生当日と、以降1週毎に抜管までの気管吸引液を採取し、生理食塩水を加え遠心分離した後、検体として凍結保存した。こうして得られた検体は117例であった。、ELISA法により、HGF濃度を測定し、アルブミン比とした。 主な結果 1)検体のほぼ全例(97%)に、HGFを検出した。2)在胎22週の症例においても、出生当日よりHGFを検出した.3)HGFの出生当日の平均は0.02±0.09ng/mgalbuminで、その後上昇し、抜管にむかって下降に転じる傾向にあり、9例(38%)は生後3週目にピーク値(平均0.49±0.41)をとった。4)ピーク値を比較すると、CLD1,2型よりも3型が(0.54±0.30vs1.07±0.72,p<0.05)、また母体にステロイドが投与されたほうが(0.93±0.58vs0.48±0.29,p<0.05)有意差をもって高い傾向にあった。 結論 CLDの全例において、出生早期より連続して気管内からHGFが検出された。 考察 以上のことから、早産児の損傷肺においても、出生後早期からHGFによる修復機構が存在する可能性が示唆された。現在、HGFは各種臓器の難治性疾患に対し、遺伝子治療を含めて、臨床応用が検討されている。今回示したように、未熟肺においてもHGFを介する修復機構が存在する可能性があるとすれば、CLDもHGFを補充する治療対象と考えてよいと思われる。
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