本研究のおいては、Down症候群児の一過性骨髄異常増殖疾患(Transient myeloproliferative disorder : TMD)におけるAML1遺伝子の関与を明らかにすることを目的とした。まず、CD34陽性細胞を含めた骨髄系細胞の高発現している細胞内チロシンキナーゼBMXに注目した。BMXは造血前駆細胞や血管内皮細胞に発現しているTie2によりチロシンリン酸化され、これらの細胞において重要な働きを担っていると考えられている。このため、TMD症例の芽球におけるBMXの役割を検討するため、まず、BMXのクローニングを行いクローンを得た。このクローンをプローベとして現在TMDとコントロールの芽球および成熟好中球のBMXの発現の検討を計画している。また、ヘルシンキ大Kari Alitalo教授のグループよりBMXポリクローナル抗体の供与を受けたため、これを用いTMD症例の芽球の蛋白レベルの発現およびリン酸化の状態を検討する。また、現在Down症候群児の検体の収集をすすめている。今後はBMXの上流にあたるTie2の発現をみるとともに、自治医大小児科郡司がクローニングおよび作成したAngiopoietin1、Angiopoietin2および活性型Tie2ミュータントを用いてTMD芽球におけるTie2/BMXのシグナルの検討を行うとともにinducible AML1細胞株が得られれば、AML1on/offによるTie2/BMXシグナルへの影響を検討していく。
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