目的:遺伝学的アプローチによりアクチビンIIA受容体-Smad2シグナル伝達機構を個体レベルで明らかにし、その性腺を含めた個体発生における役割を解明する 結果: 1)アクチビンIIA受容体-Smad2シグナルのと中胚葉誘導、頭部形成アクチビンIIA受容体ホモ接合体(ActRIIA-/-)の15%は中胚葉異常を呈し胎生9.5-10.5日で致死となり、稀に頭顔面形成異常を生じ出生直前に死亡し、残り約80%は正常に出生する。アクチビンIIA受容体とSmad2遺伝子の遺伝学的相互関係を調べる目的でその複合ヘテロ変異マウスを作成し解析した。その結果ActRIIA-/-Smad2+/-の遺伝型のマウスはその殆どが中胚葉異常を呈し胎生9.5-10.5日で致死となり、稀にこの時期を過ぎたものでも頭顔面形成異常を生じ出生直前に死亡した。またActRIIA+/-Smad2+/の一部でも同様な現象がみられ、さらに性腺の低形成を認めた。すなわち、Smad2遺伝子1コピーを欠損することで、ActRIIA-/-では形質のpenetranceが100%に上昇し、ActRIIA+/-で新たにActRnA-/-でみられる形質が出現したことより、中胚葉形成、性腺形成などの個体形成においてActRIIAとSmad2は同一シグナル伝達経路に位置する可能性が示唆された。 2)アクチビンIIA受容体と始原生殖細胞ムアクチビンIIA受容体欠損マウスを用いてその胎生期における始原生殖細胞の解析を行なった結果、ActRIIA-/-で始原生殖細胞の著明な減少を認め、ActRIIA+/-では野生型とActRIIA-/-の中間の値を示した。このことより、アクチビンIIA受容体は始原生殖細胞の発生、増殖、移動にも不可欠あることが示唆された。
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