多くの自己免疫疾患は女性に多く、妊娠や出産で寛解や増悪をきたすことからエストロゲンが免疫系細胞に関与していると考えられる。エストロゲン受容体(ER)は転写因子であり標的遺伝子のプロモーター領域に働いてその発現を調節している。しかしながらエストロゲンが免疫細胞でどのような遺伝子の発現を調節しているか不明である。自己免疫性疾患では標的臓器の細胞にHLAクラスIIが異所性発現しており疾患の成因に深く関与している。HLAクラスIIの発現は遺伝子の転写レベルで調節され、プロモーター領域のシスエレメントに作用する種々の転写因子(CIITA、RFX等)が同定されている。 我々はエストロゲンがHLAクラスIIの発現に影響をあたえるかどうかをトランスフェクション法を用いたレポータージーンアッセイで検討した。HLA-DRα遺伝子のプロモーター(-176〜+45)をルシフェレースレポータープラスミドに組み込んだDRα-LUCcDNAとERα発現プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトし、エストロゲンを培養液に加えルシフェレース活性を測定したところエストロゲンにより転写活性が10倍増強した。ERαをトランスフェクトせずCIITAをトランスフェクトするとリガンド非依存性に30倍増強した。ERαとCIITAの両者をトランスフェクトするとリガンド依存性に30倍が150倍へ増強した。以上よりERαとCIITAはエストロゲン依存性に相乗的にクラスII発現を調節する可能性が示唆された。ERαを発現するMCF-7細胞ではIFNγ刺激によりクラスII発現の増加をフローサイトメトリーにて確認できたが明らかなエストロゲンの効果は認められなかった。現在使用したHLA-DRαプロモーターからエストロゲン応答が保存あるいは消失する部位を検討しエストロゲン応答配列(ERE)をを同定し、それをゲルシフトアッセイで確認する作業の進行中である。
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