研究概要 |
プロテインフォスファターゼ2Cα(PP2Cα)はインスリン依存性にインスリン受容体と結合する.PP2CαがIRとIRSのセリン残基の脱燐酸化を介してインスリン刺激伝達に重要な役割を果たしており,PP2Cα遺伝子の異常はインスリン感受性に影響を与えインスリン抵抗性,糖尿病の発症に関与する可能性がある.本研究では糖尿病・インスリン抵抗性におけるプロテインフォスファターゼ2Cαの役割を明らかにする. 既報のヒトPP2CαのcDNAの配列を元にヒトゲノムPACライブラリーをスクリーニングし,PP2Cαのエクソン,イントロン構造を決定した.決定した配列をもとにイントロン内にプライマーを作成し,各エクソンをPCR SSCP法およびPCRダイレクトシークエンス法により,当科に通院する2型糖尿病患者と肥満者,および耐糖能正常者を対象として変異の有無を検討した.その結果,現在までのところ各50名のシークエンスを行っているが,エクソン内には塩基の変異を認めていない.少なくとも蛋白翻訳領域には頻度の高い多型は存在しないと思われる.さらに対象を増やして検討を続けている.また,プロモーター領域に検索範囲を広げてPCRダイレクトシークエンス法により遺伝子変異の検索を行っている. モデル動物の検討では,インスリン抵抗性モデル動物での脂肪組織でPP2Cαおよびβの発現が亢進していることを認め,インスリン抵抗性状態でPP2Cの遺伝子発現が調節されていることが判明した.
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