糖尿病妊婦における蛋白尿および高血圧の危険因子を明らかにし、治療、管理に役立てることを目的とした。1994-99年に管理を行った糖尿病合併妊婦、1型糖尿病120名、2型糖尿病162名を対象とした。 1.妊娠中に蛋白尿、高血圧が出現した症例(A群)と蛋白尿、高血圧、浮腫が認められなかった症例(C群)において、体重、血糖コントロール、合併症等の臨床パラメータ、および、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、アンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子多型を比較した。2.妊娠前より蛋白尿、高血圧の認められた妊婦(B群)の妊娠中の経過、ACE遺伝子多型につき検討した。 1(1)1型糖尿病120名中20名、2型糖尿病162名中14名に妊娠中蛋白尿、高血圧が出現した。(2)初産婦の頻度は1型、2型糖尿病ともA群で高い傾向にあった。(3)1型糖尿病ではA群で網膜症の進行が認められた。(4)A群、C群で分娩年齢、罹病期間、高血圧の家族歴、ACE、AGT遺伝子多型に差はなかった。(5)1型糖尿病では妊娠前BMIおよび妊娠中の体重増加はA群で高値であった。(6)2型糖尿病では妊娠前HbA1cはA群で高値であった。 2(1)妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦は4名、高血圧を認めた妊婦は1名、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦は1名であった。(2)蛋白尿陽性妊婦4名中3名で妊娠中に単純から増殖への網膜症の悪化を認めた。(3)遺伝子解析は5名に可能であった。ACE遺伝子に関しては、妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦はID2名、DD1名、高血圧を認めた妊婦はII、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦はIDであった。 糖尿病合併妊婦の蛋白尿、高血圧の出現は、1型糖尿病では妊娠中の体重増加が、2型糖尿病では妊娠前の血糖コントロールが関与することが示唆された。妊娠前より血糖コントロール、体重管理を厳重にし、網膜症の進展に注意することが重要である。
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