1型糖尿病患者の糖尿病性血管合併症における血清AGE値の意義について 【目的】糖尿病性血管合併症の進行には、持続的な高血糖下で促進的に形成、蓄積されるadvanced glycation endproducts(AGE)が関与しているが、関与するAGE構造体を明らかにするため、血清AGE値をCML(N^ε-(carboxymethyl)lysine)AGE(C)、non-CML AGE(N)及びPentosidine(P)に分けて測定し、合併症との関連につき検討した。【対象と方法】対象は1型糖尿病患者84名(男36名、女48名、平均年齢31±8歳)、罹病期間は19±6年である。Rabbit serum albumin(RSA)を8週間ブド糖とインキュベートして得たAGE-RSAを免疫原としてAGE抗体を作製し、affinity chromatographyを用いてCML抗本、non-CML AGE抗体に分け、血清AGE値をELISA法で測定した。また、Pentosidine-BSAを用いてPentosidine抗体を作製し同様にELISA法で測定した。網膜症は無し35名、単純群24名、増殖群25名の3群に、腎症は無し47名、早期群32名、顕性群5名の3群に分類した。【結果】血清AGE値と年齢、罹病期間、血糖値の間には有意な相関はなかった。しかし、C値、N値でHbAlcと有意(p<0.0001)な正相関を認めた。網膜症との関連ではC値(p=0.005)及びN値(p=0.011)が、腎症ではN値(p=0.015)が病態の進展と伴に有意に高値となった。【考察】1型糖尿病患者において、網膜症の進行にはC値及びN値が、また腎症の進行にはN値が相関し、合併症進行のマーカーに成り得ることが示された。更に網膜症の進行には酸化ストレスの関与も示唆された。P値と両合併症との間に相関が見られなかったことから、合併症の進展にはCML AGE及びnon-CML AGEを認識するAGE受容体系の関与が推測された。
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