研究概要 |
糖尿病の根本的治療にはグルコースセンサーを有するインスリン配送細胞の生体内への供給が必要である。そのため,異種膵島やin vitroで胎生膵組織より形成させた膵島様の細胞集団:islet-like cell cluster(ICC)を免疫隔離し移植する可能性が注目されている。最近,申請者らは比重密度勾配遠心法により膵島をアルギン酸Ba膜で被覆化させる技術を確立した。膵島は胎生期膵管細胞より分化するが,胎児膵組織をコラーゲナーゼで分解して培養するとICCが形成されインスリン分泌能も膵島と同様であることが報告されている。しかし,ICCは古典的アルギン酸カルシウム-ポリリジン膜カプセル化によりインスリン分泌能の低下が問題視されている。 本研究ではすでに確立した比重密度勾配遠心法を用い胎児膵組織から誘導した膵島様細胞集団(ICC)をカプセル化し異種移植への応用の可能性,in vitro膵島と同じ細胞構成のICCを高速で形成させる条件を明らかにすることを主眼においている。 胎生20日Wistarラット膵組織をコラゲナーゼ処理し、dispersed cellsを採取,CMRL1066培地中で培養するとICCが形成された。ICCのbudding部分には免疫染色でインスリン産生が確認できた。ICCを比重密度勾配遠心補でアルギン酸バリウム膜でカプセル化した。In vitroで高濃度グルコースに対するインスリン分泌反応を検討すると,非カプセル化,カプセル化ICCとも速やかなインスリン分泌がみられ,両者に差はなかった。以上より,本カプセル化技術はICCにも応用可能と考えられた。 ICC形成を効率よく誘導する条件を検討するため,成長因子の影響を,インスリン含量を指標に評価している。予備的成績では,ニコチナマイド,hepatocyte growth factor,activin AにICC形成促進作用がみられている。
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