研究課題
昨年度の報告では、培養シュワノーマ細胞(JS1細胞)において高グルコースによりPKCα膜分画タンパク発現量が減少することを明かとした。PKCの下流に存在すると考えられるMitogen activated protein kinase(MAPkinase)活性に対する高グルコースの影響を検討したところ、リン酸化ERK1/2の発現量には変化が認められなかったが、リン酸化p38発現量が有意に低下した。この低下はアルドース還元酵素阻害剤により改善されたことから、神経系細胞ではポリオール代謝異常を介してPKCαさらにはMAPkinase活性が低下し神経機能異常が起こる可能性が明かとなった。糖尿病状態における非酵素的糖化反応、酸化ストレスにより糖尿病末梢神経の神経構成成分におけるPKCアイソフォーム発現性の異常が想定されることから、糖尿病ラットの坐骨神経におけるPKCアイソフオーム発現性に関して免疫組織学的検討を行った。Wistar系雄性正常ラットを用い、STZの腹腔内投与により糖尿病ラットを作成し、12ヶ月飼育後に坐骨神経を摘出、抗ラットPKCαおよびβ1・β2抗体を用いて免疫組織染色を行い、光顕下にて組織の染色性と局在を判定、さらに各抗体陽性神経血管の計測を行った。PKCα:シュワン細胞において強度の染色性が、神経軸索では中等度の染色性が認められた。神経束内微小血管においては軽度の染色性が認められた。糖尿病ラットと正常ラットの染色性には差が認められなかった。PKCβ1およびβ2:正常ラットおよび糖尿病ラットともにシュワン細胞には中等度の染色性を、神経軸索には弱い染色性が観察された。神経束内微小血管ではPKCβ1とβ2の中等度の染色性を認めたが、微小血管におけるPKCβ1と2染色性を半定量したところ、正常ラットに比し糖尿病ラットにおいて中等度から強度陽性血管の割合が増加傾向であった。これらのことから末梢神経組織におけるPKCアイソフォームの局在および発現量はその構成組織によって異なり、高血糖による変化にも組織特異性が存在する可能性が示唆された。
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