研究概要 |
移植免疫学の究極の目標は、移植後持続的免疫抑制剤の投与を必要としない免疫寛容を成立させることにある。我々はマウスにおいて抗TCRαβ抗体を用いたfully-alloの組み合わせでも成立するシステムについて検討してきた。今回、導入初期のメカニズムの解析をおこなった。C57/B6マウスにfully-allo、Class Iのみ,Class IIのみClass I、IIのみ異なる組み合せのマウスの脾細胞1x105個、静注し、7日後のドナー抗原に対する反応性を検討した。脾細胞1x105個、静注したことにより、皮膚移植片生着延長効果が認められたのはClass Iのみ異なる組み合せの場合のみであった。fully-alloの組み合せで皮膚移植片生着延長効果は認められなかった。そこで、ドナーMls抗原特異的に反応するVβ6陽性細胞の動向について検討したところ、脾細胞1x105個、静注したことによりその数は減少はしていたのもの末梢血中に存在していた。こののこったMls抗原特異的に反応するVβ6陽性細胞のin vitroでの反応性を検討するためにanti-Vβ6-monoclonal抗体による刺激試験をおこなったところ、抗体刺激によるin vitroでの反応性は低下していたものの残存していた。以上のことより、脾細胞1x105個静注は特定の抗原に対する反応性を低下させる。その機序は抗原特異的に反応するVβ6陽性細胞の除去とアナジーがであった。しかしながら、移植抗原となりうるものはドナー細胞の表面には多種存在し、それらの抗原にたいする総和としてのfully-alloの組み合せにおける皮膚移植片生着延長効果は認められなかった。抗TCRαβ抗体を用いたシステムの導入初期に脾細胞1x105個静注するが、この機序も部分的に寛容誘導に寄与しているものと思われた。
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