1.原発乳癌および血清における接着因子インテグリンαvβ3の発現 ヒト乳癌細胞株、ヒト血清における接着因子インテグリンαvβ3の発現を、化学発光法を用いたWestern Blotting法にて検討したが、乳癌細胞株では膜蛋白が破壊されるためか、発現を確認できなかった。また、血清においても非特異的な反応が多く認められ、インテグリンαvβ3の発現を同定することは困難であった。そこで、ヒト乳癌細胞株におけるインテグリンαvβ3の発現を、flow cytometry、RT-PCRを用いて検討したところ、MDA-MB-231とMDA-MB-435の2種類の細胞にインテグリンαvβ3の発現を認めた。ヒト血清に関しては検討中である。 2.骨髄細胞とco-cultureしたヒト乳癌細胞株における接着因子インテグリンαvβ3の発現 接着因子インテグリンαvβ3の発現を認めたヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231)を用いて、4週齢のヌードラットの皮下(乳腺)に、(1)ヒト乳癌細胞株+マトリジェルと(2)ヒト乳癌細胞株+骨髄細胞+マトリジェルを接種して、腫瘍の増殖とインテグリンαvβ3の発現の差を調べた。その結果、腫瘍の増大傾向とその腫瘍内のインテグリンαvβ3の発現は、(1)と(2)の間に差は認められなかった。 まとめ-我々のラット実験モデルでは、接着因子インテグリンαvβ3の発現しているヒト乳癌細胞株は、発現していない乳癌細胞株よりも有意に骨転移を形成しやすいことが分かってきているが、臨床において、血清中のインテグリンαvβ3の発現を同定することは困難であった。また、乳癌細胞と骨髄細胞の相互作用についても、さらに検討が必要と思われた。
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