過冷却保存の基礎実験として、ラット肝において肝組織血流が動脈結紮により如何に影響するか、類洞血流が部位別に生理的に如何に異なるか、またラット肝冷保存時、類洞の如何なる部位が障害されるかをLewis系雄性ラット(体重200〜300g)を用い組織学的にZone1、Zone2、Zone3に分けて検討した。 方法: 1 肝動脈結紮前後の肝組織血流速度(n=6) レーザー組織血流計(TBF-LN1/ユニークメディカル社)を用いて測定した。 2 肝類洞zone別の血流速度(n=10) 蛍光ラベルされた赤血球の単位時間当たりの移動距離から測定した。 3 ラット肝を門脈より4℃乳酸リンゲル液で灌流後に4℃乳酸リンゲル液保存(0.6.12.24.36.48hr)各々の時間後にホルマリン固定し、冷保存時の部位別組織障害をH.E染色と銀染色で検討した。(n=42) 肝臓組織血流レーザー測定 肝動脈結紮前肝組織血流速度は平均456.2±85.2(μm/sec)であり、肝動脈結紮後の肝組織血流速度は平均248.3±49.1(μm/sec)と有意な差があった。 Zone別肝類洞血流速度 蛍光色素による赤血球速度の測定においてzone1、zone2、zone3の順に血流が増加しており、肝動脈結紮後も同様な所見が得られた。又各zone間に有意な差があり、肝動脈結紮後においても同様な所見が観られた。 類洞内皮細胞の経時的変化 zone1では6時間後より類洞内皮細胞の核の濃染化を認め、24時間後にはzone3でも認められる。4℃乳酸リンゲル液保存において6時間後で既にzone1では核の濃染化が観られる。類洞の狭小化も6時間後より現れ、肝冷保存で最初に障害される部位はzone1であった。
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