研究概要 |
【目的】消化器癌患者の血中SOD活性測定の臨床的意義を検討した。 【対象と方法】消化器癌患者61例(胃癌34例、大腸癌27例)から手術や化学療法などの影響を除くため未治療初診時の末梢血を採取した。血中SOD活性をNBT還元法にて測定し、臨床病理学的因子及び予後との関連を検討した。 【結果】胃癌、大腸癌症例の平均SOD活性は各々15.9±2.6%、17.0±2.9%であり、いずれも健常人より高値を示した(正常値2.7〜11.2%)。胃癌患者のSOD活性を宿主側因子の面から分析すると、70歳以上では14.5±3.0%と70歳未満の16.6±7.3%より有意に低値であった(p<0.01)。腫瘍側因子に関しては、StageIV、3・4型の浸潤型、肝転移陽性例、n3,4転移陽性例でSOD活性が高い傾向にあったが、明らかな有意差はなかった。一方、大腸癌ではSOD活性と臨床病理学的因子との関連はみられなかった。次に、胃癌患者のSOD活性を年令と進行度の両面から分析すると、広範転移したStageIV症例の場合、70歳以上の高齢者のSOD活性は17.8±2.6%と70歳未満の13.7±2.1%に比して有意に低いという特徴が認められた(p<0.05)。さらにStageIV胃癌(根治度C)の予後を分析すると、SOD高値群(≧18%)では7例中5例(71%)が6ヶ月以上と比較的長期生存したが、低値群(<18%)では8例中6例(75%)が3ヶ月以内に死亡した。SOD低値群の平均生存期間は3.4ヶ月であり、高値群の9.7ヶ月より有意に不良であった(p<0.05)。【考察・まとめ】広範に転移したStageIV胃癌において70歳以上の高齢者にみられた末梢血SOD活性の低下は宿主の癌に対する脆弱性を反映し、このような高齢者では癌がさらに発育進展し、生存期間の短縮を惹起するものと推測された。
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