樹状細胞を用いた免疫療法を行う場合、腫瘍抗原を提示させる方法が問題となる。膵癌では腫瘍関連抗原が同定されていないため、膵癌細胞そのものを腫瘍抗原の供給源として樹状細胞に取り込ませる方法が考えられる。本研究では放射線照射を行った膵癌細胞が樹状細胞に貪食されるか否かについて検討した。 培養膵癌細胞株Panc1、MiaPaCa-2、PK-1を用いて25.35Gyの電子線を照射した後、Annexin VおよびPropidium Iod ideを用いて染色し、フローサイトメトリにて解析したところ、照射後3時間の時点でいずれの細胞株においてもアポトーシスとネクローシスの両方が検出された。腫瘍細胞の種類によってアポトーシスをおこしやすいものと、むしろネクローシスに陥りやすいものとがあった。照射線量が大きいほどネクローシスになりやすかった。 次に膜に固定される蛍光色素(オレンジ色)にて染色したPanc1またはMiaPaCa-2に30Gyの照射を行った後、予め末梢血単球よりGM-CSF、IL-4を用いて誘導、培養しておいた未成熟樹状細胞(緑色の蛍光色素にて染色したもの)を加えて共培養し、18時間後に蛍光顕微鏡で観察したところ、腫瘍断片(オレンジ色)が樹状細胞(緑色)に取り込まれている様子が確認された。 同様に蛍光色素(オレンジ色)にて染色したMiaPaCa-2に30Gyの照射を行った後、未成熟樹状細胞を加えて18時間共培養した後、FITC標識抗CD1a抗体、および抗HLA-DR抗体にて染色し、フローサイトメトリにて解析したところ、いずれの抗体を用いた場合でもダブルポジティブ細胞(腫瘍片を貪食した樹状細胞)が多数認められた。 以上より末梢血単球よりGM-CSF、IL-4を用いて誘導、培養した未成熟樹状細胞は、放射線照射を実施した膵癌細胞を貪食することが確認された。
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