我々は、食道扁平上皮癌47例(pN0:15例、pN1:32例)に対し、comparative genomic hybridization(以下CGH)法による染色体・遺伝子異常の解析を行い、臨床病理組織学的事項と比較検討し、リンパ節転移個数に関する染色体・遺伝子異常を解明した。 【方法】新鮮凍結標本より腫瘍DNAを、正常ヒトリンパ球より正常DNAを抽出し、それぞれ異なる蛍光色素で標識し、正常ヒト分裂中期染色体上に同時にハイブリダイズさせ、CCDカメラに連動した解析ソフトでDNAコピー数異常を解析した。 【結果】組織学的リンパ節転移個数が2個以下である群(A群:n=27)と3個以上である群(B群:n=20)との間に有意差を認めた(p=0.0001、2年生存率はA群71%、B群21%:Kaplan-Meier法)。そこで、この2群間におけるCGH解析結果を検討したところ、平均DNAコピー数異常数(A群:9.2箇所、B群:13.7箇所)、平均DNAコピー数増加数(A群:5.2箇所、B群:7.1箇所)、平均DNAコピー数減少数(A群:3.8箇所、B群:6.6箇所)は全て有意にB群が高値であった(それぞれp=0.01、p=0.04、p=0.01)。さらにDNAコピー数異常領域を比較すると、B群において有意に8q23-qter(p=0.001)、5p14-pter(p=0.04)、12p(p=0.05)のコピー数の増加を認めた。 【結語】これらの領域には食道扁平上皮癌の進展に関わる癌関連遺伝子の存在が示唆さた。術前のCGH解析は、潜在的なリンパ節転移個数を予測することができ、リンパ節郭清範囲決定の一助となると思われた。
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