1986年より、下部進行直腸癌症例に対して、5-FU座薬、温熱治療及び放射線治療を併用した三者併用療法を行い、良好な成績を挙げてきた。一方、多価不飽和脂肪酸に温熱を加えるとfree radicalを発生しcytotoxicityを発揮することに着目し、今回の課題では、docosahexaenoic acid(DHA)を含有した5-FU座薬を開発し三者併用療法の効果を増強させることを目的とした。 多価不飽和脂肪酸は、その吸収過程でlipaseの介在を必要としないため、座薬でも、 trans-mucosalに吸収させることが可能であった。 DHAの経口投与による粘膜移行性もかなり良好であり、これはマウスよりもヒトの方が顕著であった。しかし、経口による直腸粘膜移行量に比較すると、座薬によるDHAの直腸粘膜移行量は20倍で、座薬による投与は効率的にも優れていることが判明した。 DHA投与による腸内細菌叢の変化も生理的に問題のないものであった。
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