本年度は、c-Jun promoter制御下にuracil phosphoribosyltransferase(UPRT)遺伝子あるいはlacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを作製する予定であったが、c-Jun promoterのクローニングの段階で難渋し、作製しえなかった。 そこで、上記アデノウイルスベクターの作製と平行して、UPRT遺伝子導入・5-fluorouracil投与・X線照射を組み合わせたChemo-radio-gene therapyの抗腫瘍効果を、既に作製済みのCAG promoter制御下にUPRT遺伝子あるいはlacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクター(各々AdCA-UPRT、AdCA-lacZ)を用いて検討した。 まず、ヒト培養大腸癌細胞株HT29に、MOI 10-100でアデノウイルスベクターを感染させ、growth assayを行ったところ、AdCA-UPRT感染細胞の5-fluorouracil感受性は、非感染細胞・AdCA-lacZ感染細胞に比較して、約15-50倍増強した。 次に、Chemo-radio-gene therapyの効果を検討するために、HT29細胞にアデノウイルスベクターを感染させ、低濃度の5-fluorouracil存在下に、0-6 GyのX線を照射するcolony formation assayを行ったところ、AdCA-UPRT感染細胞は、非感染細胞・AdCA-lacZ感染細胞に比較して、有意にX線感受性が増強した。 以上から、UPRT遺伝子導入を用いたChemo-radio-gene therapy自身の有効性は、確認しえた。今後、遺伝子発現機構を調節することで、癌特異的な治療効果をもたせるべく、引き続きc-Jun promoter制御下UPRT遺伝子を発現するアデノウイルスベクターの開発を行っていく予定である。
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