化学療法と放射線療法に遺伝子治療を応用したChemo-Radio-Gene Therapyの開発を試みた。 大腸癌で発現し、放射線刺激により増強される転写因子c-Junのプロモーター領域を利用して、癌特異的放射線感受性c-Junプロモーターの開発を試みた。c-Junプロモーター制御下にlacZ遺伝子を発現するプラスミドを作製し、プロモーター活性を検討した。c-Junプロモーターの活性は、CAGプロモーター、CEAプロモーターに比して低く、放射線によるプロモーター活性増強効果は認められなかった。以上より今回作製したc-Junプロモーターは、癌特異的放射線感受性プロモーターとしての活性は低く、癌特異性と放射線感受性を兼ね備えた遺伝子発現制御機構を有するアデノウイルスベクターの開発には至らなかった。 そのため、CAGプロモーター制御下に大腸菌由来uracil phosphoribosyltransferase(UPRT)遺伝子を発現するアデノウイルスベクター(AdCA-UPRT)を用いて、Chemo-Radio-Gene Therapy(AdCA-UPRT/5-FU/Radiation system)の可能性を検討した。前年度のAdCA-UPRTのヒト培養大腸癌細胞(HT29)における5-FU存在下放射線感受性増強効果に続いて、本年度は、ヌードマウス皮下腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討した。AdCA-UPRT/5-FU/Radiadon群の抗腫瘍効果は、5-FU群、Radiation群、5FU/Radiadon群、AdCA-UPRT/5-FU群に比して有意に強力で、径8mmの皮下腫瘍をも縮小させた。 以上からUPRT遺伝子を用いたChemo-Radio-Geno Therapyの有効性が示唆され、局所進行・再発大腸癌に対する新しい治療法としての可能性が示された。
|