経時的に急性の胃炎から腸上皮化生に至る組織学的変化が起こってくるスナネズミH.pylori感染モデルを用い、H.pyloriにより惹起される胃炎と胃癌発生との関連をみるため、感染からの時期を変えMNU(N-methyl-N-nitorosourea)を投与し、胃炎の時期の違いで癌原性刺激の受けやすさに違いがあるか検討した。 菌株はATCC43504標準株、スナネズミは7週齢の雄を用いた。H.pyloriを単回経口接種し感染を成立させた後、3群に分け5週後、15週後、25週後にMNUをそれぞれ10週間飲水投与した。又、MNUを10週間飲水投与した後、H.pyloriを接種する群を設けた。これら4群に対しMNU投与終了20週後に屠殺、胃標本を摘出し、各群の胃粘膜の組織学的変化を比較した。 MNU投与終了20週後では、各群とも胃癌の発生は認めなかった。しかしながら、H.pylori感染後早期にMNUを投与した群と、H.pylori感染胃炎を一定期間持続させた後MNUを投与した群とでは、組織学的変化の異なる胃炎の発症を認めた。MNUを前投与した群、H.pylori感染5週後にMNUを投与した群の胃粘膜では、隆起性病変を多く認めた。(12/16、6/8)これらは組織学的には過形成であった。これらの群は潰瘍性病変は少なかった。(2/16、2/8)一方、H.pylori感染15週後、25週後にMNUを投与した群の胃粘膜では、隆起性病変は少なく(2/8、2/6)、腺境界部に発生する潰瘍性病変を多く認めた。(6/8、4/6) 各群に組織学的変化の異なる胃炎の発症を認めた。この異なる変化が胃発癌にどう関わっていくか、より長期の観察を行うことにより明らかにしていきたい。
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