膵癌は臨床的に早期診断が難しく予後不良な疾患であり、従来用いられているCA19-9やCEAなどの糖蛋白のマーカーも早期診断には不適当である。当研究は、膵癌の早期診断のためのあらたな血清マーカーとなる蛋白質を同定しその臨床応用を目指すものである。その方法としては、膵癌組織に特異的に高発現する遺伝子群をcDNAサブトラクションの手法で同定し、それらの遺伝子産物のうち細胞外に分泌されて血清中に同定でき、微小な膵癌組織の存在の診断マーカーとなりうるものを検索するという計画である。そのためには手術標本として得られた膵癌組織とその周囲の正常組織からRNAを抽出することが必要となるが、現在のところ、これらの組織からのRNA抽出やサブトラクションされた最終産物のクローニングに必要な環境整備などの基礎的な段階に時間がかかっており、残念ながらサブトラクションによる実際の遺伝子単離までにはまだ到っていない。これから改善すべき問題点としては、RNA抽出の効率および品質の向上、良好な状態での組織サンプルの採取、PCR法を用いたサブトラクションにおける反応条件の至適化があげられており、現在鋭意検討中である。いままでのところ、まだ遺伝子を単離できる段階まではいたっていないが、その候補となる遺伝子が単離でき次第、その抗体を作製し、血清中の蛋白質を測定したい。来年度の報告では遺伝子の単離および発現の解析を報告できる予定である。
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