(1)リンパ節細胞中のP selectin ligandの発現頻度の検討 動物を用いて以下の実験を行った。活性のある繊維細胞肉腫細胞株MCA205を用いて鼠径リンパ節近傍に皮下移植し、約10日後にその所属リンパ節である鼠径リンパ節、さらに大動脈リンパ節ならびに腋窩リンパ節を採取した。採取したリパ節を単細胞化した後、リンパ節に含まれる細胞数とリンパ節細胞中のP selectin ligand陽性細胞数を細胞表面抗原の測定により検討した。所属リンパ節は節1つあたり、平均して約1x10^7のリンパ節細胞をもち、大動脈周囲リンパ節・腋窩リンパ節の約1x10^6にくらべ10倍の細胞数を保有していた。また細胞内にあるP-selectin ligad陽性細胞数の割合も後者の3%に対して前者は7%と陽性細胞比率も著しく上昇していた。 (2)P selectin ligand陽性細胞の分離 上記の皮下腫瘍移植後のリンパ節よりナイロンカラムを通してT細胞富裕細胞液を作成する。この細胞にP selectin chimeraを反応させ、このchimeraに結合する微小金属結合モノクローナル抗体を用いて磁場内のカラムを通過させることによりP selectin ligand陽性細胞にとんだ細胞液を作成した。(純度98%)これらの細胞と単離前のT細胞浮遊液ならびに対照である腋窩リンパ節のT細胞浮遊液で腫瘍細胞であるMCA205と48時間混合培養した後の細胞培養液上清におけるIFNγの分泌を比較検討した。鼠径リンパ節におけるIFNγの分泌は認められるものの、腋窩リンパ節からはほとんど認められなかった。また鼠径リンパ節から単離したP selectin ligand陽性細胞からは単離前の鼠径リンパ節の約20倍のIFNγの分泌を認めた。以上より皮下に移植した腫瘍の所属リンパ節からは反応性に細胞数の増加・腫大したリンパ節を有し、その中に多くの腫瘍に対するIFNγ分泌能のある前効果Tリンパ球が存在することが示唆された。
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