肝硬変に対する遺伝子治療をビーグル成犬を用い、ラットで行ってきた肝細胞増殖因子(HGF)のプラスミッドDNAを用いた経肝動脈的な手法により臨床研究の前段階としての成果を得た。 ず肝硬変モデルはジメチールニトロソアミン(DMN)を2mg/Kg、週に2回静脈内投与を6週間継続し作成した。12週間で腹水を貯留する肝硬変末期の像を呈するに至る。組織学的には10週以降で線維化が増加し12週で完成した。ヒトHGF遺伝子導入は臨床応用を想定し、肝動脈にリザーバーカテーテルを挿入留置し、これよりマニトールを用いた高浸透圧法にて7週目以降naked HGF DNAを種々の濃度で導入しその発現効率・治療効果を検討した。一方対照群にはLacZ遺伝子を同様の方法で導入した。 ヒトHGF蛋白は肝組織中特にグリソン域を中心に発現を示し、肝組織中にはELISAで導入後7日目が最も高値を示し、1.67mg/mgtissueを示した。肝線維量を線維染色の上NIHイメージで定量化すると、HGFの導入濃度の濃度依存的に線維量は抑制されていた。さらに線維化抑制caseではTGF-β1、α-SMAの発現も対照群に比し有意に抑制されていた。また血液性化学検査でも有意差は得られなかったが改善の傾向を示した。また線維化を定量すべくヒアルロン酸、ハイドロキシプロリンを測定しいずれもHGF遺伝子の投与量の濃度依存性に抑制することが示された。モデル犬は遺伝子導入群ではすべてのイヌが実験終了時の12週を超え生存したのに対し、対照群では著明に腹水を貯留し肝不全死に至った。 以上の結果から、本法は先に報告したHVJリポソーム法でラット肝硬変モデルに行った遺伝子治療に相当する治療効果を示すとともに、HGF治療の安全性や大動物におけるHGF遺伝子の投与濃度の決定にも大いに役立つ結果を得た。
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